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メーリングリスト(以下ML)から「伝説のスレッド」を紹介します。


酵母の遺伝子機能解析に用いられるマーカーカセットの"MX"の意味は何なのか?

2006.9.21

cerevisiaeの遺伝子破壊でKanMX4というカセットが使われています。Kanはカナマイシンレジスタントの意味だと思うのですが、「MX」の意味はなんでしょう?

「Myxococcus xnathus説」

「KanMX "MX stands for"」でググルと以下のようなページがヒットしました。真偽のほどは定かではありませんが、もっともらしくきこえます。

"MX" in KanMX

  • I am curious, and I have a question for the yeast community. Does anyone know what the "MX" stands for in "KanMX?"
  • Isn't the original G418-resistance gene from Myxococcus xanthus? That's my guess for "MX"... Michael

「Marker eXchange説」

  • 上の説はおそらく違います。KanR遺伝子はE. coli トランスポゾンのTn903から取られています。また他の薬剤耐性の遺伝子カセットや(Ashbya)LEU2カセットも"○○MX"と名前が付いています。もっとも初期の論文の一つ(Wach et al. 1994 Yeast 10:1793)を当たっていますが、解りませんでした。その論文中最初にMXがでてくる箇所では、pFA6aに彼らは(Ashbya)LEU2(own promoter own terminater付き)をクローニングしてpFA6-AgLEU2 (AgはAshbya gossypii)と呼んでいます。次に彼らは、promoterの上流にAgLEU2遺伝子の3’領域をdirect repeatととしてクローニングして、それをpFA6-AgLEU2MX1と名付けています。
    なんでMXなんでしょう?ちなみに、制限酵素サイトがMlu1-Xba1なんてことはありません(Bgl2-BsrG1です)。著者のイニシャルも違います。direct repeatが付いたことで、(薬剤耐性の)マーカーを交換できるので "Marker eXchange"かもしれないです。
    lacZ fusion も作っていて、それには"lacZMT"と名前を付けています。lacZにはpromoterがなくて、terminatorのみがついているので、"T"はterminatorのTではないか、と予想しています。Mはmoduleかな?
  • Yeast Volume 15, Issue 14 , Pages 1541 - 1553 Three new dominant drug resistance cassettes for gene disruption in Saccharomyces cerevisiae. Alan L. Goldstein, John H. McCusker という論文に、「The lack of cross-resistance between the antibiotic resistance markers also means that it is quite easy to exchange MX markers within a strain.」という一文がありますので、MXは「Marker eXchange」だとする説に、1EURで。
  • YEAST 12: 259-265 (1996)と13:1065-1075(1997)のFig.4((kanMX2, 3, 4, 6の構造が描いてあります)を見たかぎりでは、Mはmodule, XNのNは制限酵素切断によってextractable or exchangeableなmarker moduleの違いを表しているのではと考えますが、いかがでしょう?これにSam Adamsを1本!でもMX5が無いのは何故?

「Module for eXpression説」

lazZMTのTがterminatorでMがmoduleという説は説得力があります。とすればkanMXのMもmoduleだと考えるのが自然だと思いますので、XはeXpressionだというのに私の$5を賭けたいと思います。expression moduleがMX、terminator only moduleがMTというつもりです。

おまけ「pFAの説明」

Watchは、EUROFANプロジェクトの初期に用いられたpFA6a-KanMX4の説明をする時に、pFAについては、説明しています。「pFA, plasmid for Functional Analysisの頭文字を取った」ところが、同じ文章でKanMXについては、説明が書かれていません。なんでだろー???

意外な真実

corresponding authorのDr. Peter Philippsenはバーゼルでお世話になったMike Hallの隣りの研究室なので、彼に答えを教えてもらいました。確かにこれは、論文には書けませんね。

What an interesting question. The truth is that I named the modified E. coli kanamycin resistance gene (new promotor and new terminator from the A. gossypii TEF1 gene) according to the names of specially designed and well performing cars, for example the Mazda MX5. I knew in Fall 1994 that this completely heterologous selection marker would revolutionize gene targeting in S. cerevisiae and that a catchy name was necessary for its "marketing"in the scientific community.
Your friend will be surprised to hear this story but it is true.


酵母のコロニーの成長はなぜ止まるのか?

2006.12.13

酵母をシャーレで飼っていてもシャーレ一面にシングルコロニーが大きくなる事は普段観察されませんが、コロニーの成長がとまる原因はすでに分かっているのでしょうか?

「栄養制限説」

単純に栄養が制限されるからではないでしょうか。次の論文が参考になるかもしれません(ならないかもしれません)。Yeast 15, 1159-1169 (1999) Saccharomyces cerevisiae colony growth and ageing: biphasic growth accompanied by changes in gene expression Jean-Roch Meunier, Mordechai Choder

  • お教えいただいた論文を斜め読みしましたところ、コロニー成長はrapid growthとslower growthのbiphasicな生長パタンは示すものの、液体培養とは違ってこれが単なるfermentableなgrowthからnon-fermentableなものへの切り替えではない、培地成分に廃棄物であるエタノールが増えたからという単純なものではない、という感じです。プレートであまりエタノール臭とかしませんね。エタノールが増えすぎてアウト!、ということではないですね。この論文では、コロニーがある程度大きくなると内部のものはstationaryとなり、周囲の細胞だけが分裂を続けていくとありますが、どこまでどう続けて行くのかまでは調べていませんでした。先端の酵母に取っては栄養源は常に君の先にあるのに!、と思うのですが。結構、プレートの表面が空いていても酵母は貪欲に埋め尽くそうとはしませんね。

「コロニー同士のコミュニケーション説」

昔読んだNatureの論文を思い出しました。アンモニアを介したlong distanceの酵母のcell-cell (colony-colony) communicationについての報告 です。
Palkova Z, Janderova B, Gabriel J, Zikanova B, Pospisek M, Forstova J. Ammonia mediates communication between yeast colonies. Nature. 1997 Dec 4;390(6659):532-6. PMID: 9394006
余談ですが、私たちは深海から数百株の酵母菌を分離しています。中にはシングルコロニーがシャーレ全面を覆い尽くす株もいました。シャーレに並べた他の菌株に覆いかぶさってしまい、培養後にぎょっとしました。

  • 海アンモニアで生育を阻害しあうというのは、自分と自分の仲間である他のコロニーの成長を止めますね。互いに牽制しあうというか、最後の一滴まで水を呑み尽くしてしまうということがないとしたら合目的にみえます。しかし、この紳士協定を他種が守る保証はないので、他種との戦いとなれば不利だと思いますが、どうでしょう。もしそうなら、なぜこのようなシステムが進化的に残っているか不思議です。
  • カビのように菌糸が先端生長をするならプレート一面に広がるでしょうから、酵母も菌糸型の生長をさせてやればコロニーが大きくなるのではないでしょうか。では、なぜそうならないかというところでQuorum sensingが思い浮かびました。細菌同様酵母も細胞密度が一定程度を越えるとinducerを出して集団内でphysiological changeを引きおこしますが、酵母の場合は酵母型から菌糸型への変換が特徴的なのだそうです。
    それと同時に転写レベルでstationary phase-specific genesを誘導することで、伸びる細胞は伸ばすが、出遅れたものは生育を止めるという、細菌同様のことが起きているようです。ところが、窒素源の存在は菌糸型生長を阻害しますので、コロニー周辺の細胞は菌糸型に転換したくてもそれが邪魔されている内に、stationary phase へ入らされてしまうのではないだろうかというのが私の思いつきです。
    紹介されているpaperのアンモニアがシグナルになっているというのも広義のquorum sensing と考えられるかもしれませんし、アンモニアがコロニーの生長を止めることもこれと矛盾しないのではと思います。

「人為淘汰説」

私たちが使っている酵母がプレート上でおとなしくコロニーを作る理由の一つには、人為淘汰もあるのではないでしょうか。サイズの揃ったきれいなコロニーを作る株、レプリカできれいに写る株、液培でアグらない株が好んで実験に使われてきたことは人情として良く分かります。S288C株のような使いやすい株は、アグりやギザギザコロニーの原因であるFLO遺伝子に変異があったり転写が抑制されていたりしています。干からびた果物の皮などからSaccharomycesの”野生株”を単離するようなお仕事をなさっている方に、真の”wildness”についてお聞きしてみたいところです。


実験室酵母は培養細胞のコンタミ菌なのか?

2007.5.11

培養細胞をやっている方々は、よく酵母(特にcerevisiae)をコンタミの原因として忌み嫌います。培養細胞のマニュアル本などにも生ビールを飲んだ後は培養細胞をさわるなと書いてあります。(だいたいアルコールを飲んで実験すればそりゃコンタミするだろと思いますが)どなたかこの具体的な根拠をご存じの方いらっしゃいますでしょうか?
たとえば、

  • 培養細胞のコンタミ菌のおもなものは、Saccharomyces属である。
  • 培養細胞を扱う研究室で出芽酵母を同時に扱うとコンタミの頻度が上がる。そしてそのコンタミは使われている実験酵母である。

などといった、研究(?)をご存じの方はいらっしゃいますでしょうか?本当にそうならばしょうがないのですが、濡れ衣だとすると酵母研究者としては名誉を挽回する必要があると思います。

(参考)バイオ実験イラストレイテッド(6)「すくすく育て培養細胞」より

コラム:ビールの誘惑
酵母を濾過処理しないビール(バイツェンビールなど)があり、美味しいがこれを飲んだ当日〜翌日には培養細胞を扱わない方がよい。私の周りには、誘惑に負けて飲んでしまい、酵母を見事にコンタミさせた人が大勢いる。操作する人もまたコンタミの原因の大きな要素であることをお忘れなく。この変形版として、酵母の研究をしている友人と飲みに行った後は、なんだか酵母のコンタミがあったような気もする。

経験談など

  • 言われなき偏見を堪え忍んでいる酵母研究者は多いことと思います。S288C由来の株をDMEM+10% FCSに植えて培養してみたことがありますが、増殖はかなり遅かったです。私の使っていた特定の株の濡れ衣を晴らすためにやったことなので、一般化するためには栄養要求性等の考慮が必要だと思いますが、一夜にして培地が真っ黄色という”アレ”は、Saccharomyces cerevisiaeではないと信じています。Candidaかな?
  • 私は、ここ数年、培養細胞と出芽酵母(cerevisiae)でのテーマをそれぞれ持って研究を進めております。もちろん同じ日に両方を扱うことが多くある訳ですが、酵母のコンタミは一度も経験しておりません。ある程度、念入りに70%エタノールで手を殺菌しておりますが。コンタミは明らかにバクテリアでした(自慢できませんが)。
    ラボでは少し肩身が狭いです。こちらでもコンタミが酵母だとよく話に出ますが、実際に確認したことはありません。当然見れば歴然なのですが。
    一つにペニリンなどの抗生物質を入れているからバクテリアは生えないと思われているからかもしれません。培養液がある程度日数がたったり、使うたび暖めると失活してそうですが。
    もちろん実際に酵母のコンタミはあるでしょうが、天然酵母はある程度の場所(至る所に?)にいるわけですし、大腸菌は同時に扱っている訳ですし、納豆を食べた後培養細胞を扱う人もいる訳ですから実験室酵母の話が出るたびに一応、反論(コンタミの時は見せてみろとも)はしています。PCRなどで確認するのが良いかもしれません。
  • うちのラボでは、酵母と培養細胞を同時にやっていたときがあり、培養細胞に酵母がコンタミしたことがあります。当然
    ・培養細胞のコンタミ菌のおもなものは、Saccharomyces属である。
    ・培養細胞を扱う研究室で出芽酵母を同時に扱うとコンタミの頻度が上がる。そしてそのコンタミは使われている実験酵母である。
    と疑われ、どの株がコンタミしたか、栄養要求性を調べてみましたが、どの栄養要求性も持っていませんでした。おそらく、ほんとうの野生型だと思います。
    わたしたちが使っている実験室株は、ひ弱で、空気中を飛んでいけるほど丈夫じゃないと思います。
  • 酵母の実験をしているモノが別の実験で用いている酵母をコンタミさせたとすれば実験結果がむちゃくちゃになってしまいますよね。酵母を山のように使っている研究室でもコンタミするのは自然界に存在するカビか酵母だと思います。
    しかしながら、、、、間違いなくコンタミするのは無菌操作に問題があるんだと思います。エタノールやオスバンでためしたことがありますが100%死にます。酵母だろうと、マイコプラズマだろうと、、、ウィルスだろうと扱いさえ適切であればコンタミしないのだと思います。
    ちなみに私が医学部でポスドクをしていたときは酵母はとっても危ないから近寄ったらコンタミしますよ。といって広めの実験スペースを確保していましたが、、、、、嘘も方便ということでご容赦いただければありがたいです。
    それにしてもビールを飲んで酵母がコンタミするという発想およそ研究者とは思えないですね。ちなみにウチの研究室の空きスペースで学生が生きた酵母をつかってパン作りをしていますがパン生地でこねまくっても生えたことはありません。

酵母研究コミュニティのために

皆さんお返事どうもありがとうございます。やはり実験室酵母は(根拠なく)虐げられているようですね。ただやはりこの風説あるいは都市伝説に、科学的に対抗するためには、培養細胞のコンタミが生じる度にコンタミを同定してケースリポートを作成し、それをコミュニティの力で100例ほど集めて論文にして発表するしかないですね。きっとLandmark paper in yeast researchの一つとなるでしょう。

関連する話題

  • 知人から問い合わせを受けたのですが、「培養細胞を育てているのだが、酵母がコンタミして困っている。薬剤を酵母だけを殺すことはできないか」とのことです。われらが愛する酵母を殺すとはなにごとぞ、と思いましたが(うそ)、どなたかこのようなことに使える薬剤をご存じないでしょうか。
    とりあえずの返事として、抗真菌剤エキノカンジンを挙げてみましたが、自身での使用経験はありません。なにか情報がありましたら、リプライ下さいますとありがたく存じます。
  • 培養細胞コンタミ防止には、キラー蛋白質はいかがでしょうか。W. mrakiiのトキシンなど。ただ、トキシンが培養細胞に影響しないことを調べなければなりませんが。

実験に用いる寒天について

2007.12.3

研究費のやりくり上ネックになっているのが寒天にかかる費用です。以前、和光さんで10キロか30キロのまとめうりがありましたが、最近はなさそうですね。和光さんもナカライさんもそれほど変わらないように思います。以前、松栄寒天さんやイナなんとかというメーカーもつかった記憶はあるのですが、松栄さんにしても細菌培養用だとあまり価格に差はないようですね(ほかの寒天があるのかもしれないですが)。実際、価格やグレードに関するところは、代理店の方もよく知らないとおっしゃいます。皆様のお使いのもので経費節減につながりそうな情報がございましたら教えていただけますでしょうか?

  • 十何年か前、中国に技術指導に出かけたときに、プレートを作るのに試薬の粉末寒天ではなく、食用の寒天(白い棒状のもの、そんなもの見たことがないって言う人が多いでしょうか?昔は乾物屋で売っていました)を学生が使っていたので驚きました。オートクレーブした後に、黒い沈殿が点々と生じていたので大丈夫かなーと思いましたが、案ずるより産むが安し、大腸菌と酵母の形質転換はうまくできました。ということで、いざとなれば精製していない寒天でも、生えればいいという実験には使えるようです。といっても、今では食用の寒天を手に入れるのが難しいかもしれませんが。精製寒天より高かったりして。
  • 以前、私も節約しようと、種々の寒天を使用し、Leu, Trp. Lys, His, Ade, Ura の要求性に、使用できるか、検討しましたが、ナカライと和研の微生物培地用精製寒天は、すべてのマーカーにおいて、クリアしましたが、少しグレードのおちる精製寒天だと、たしか、アミノ酸要求は、OKだったけど、Ade と Uraは、添加してないのに、要求性株が生えたような記憶があります。
    従って、ロットにもよりますが、アミノ酸要求なら、グレードの低い、精製寒天でも、使用できると思います。しかし、ロットが違うと、また、結果が違うと思うので、要注意ではないでしょうか?
    で、結局、私の研究室では、YPDやLB(LA)のような栄養培地には、食品用棒寒天、または、安価な精製寒天を使用し、SD(SC)や、DM、M9のような最少培地には、微生物培地用精製寒天を使用するいう感じで、使い分けをしています。
  • ナカライ製の普通の(培地用でない)寒天末を10kgで購入して使っています。詳しく調べたわけではないので無責任な発言ですいませんが、少なくとも私たちの実験(主に分裂酵母ですが)では特に問題は起こっていない様に思います。
    また、通常の核酸の電気泳動もこの寒天を使っています。アガロースゲルよりも多少もろい感があるので取扱いに注意は必要ですが(すぐ慣れます)、パターンの確認程度であれば何の問題もなく検出できています(EtBr 染色です)。アガロースや電気泳動用寒天も高価なので、頻繁に泳動をされる場合は、こちらも節約の手段として検討の余地ありかと思います。
  • いろいろご回答ありがとうございます。安いものと高いものそれほど違いがないのかもしれないなと改めて感じました。学生時代などは高いものとは知らずにどんどんつかっていましたが、幾分過保護に育てていただいていたようです。電気泳動もできるは、、、、考えてもみませんでした。
    お話をきいて私が四年生のころ、私の教室に高田信男先生という方がおられました高田先生は寒天の乾燥したものから抽出した寒天をつかっておられた(表現が変ですが、海藻の干したようなやつですね)を思い出しました。改めて勉強になりました。
    松栄さんからその後回答をいただきまして、通信販売のような形式で直接購入してくださいと言われました。細菌用で、大手さんより30%程度安め、精製の低い1級品だと、その半額だそうです。食品用も魅力的ですが松栄さんでためしてみることにします。
    と、ここまで書いていて気付いたのですが、そもそも私が高いと感じていたの 500g8000円程度のものだったのですが(和光さんのこれをつかっていました)よくよく考えると細菌用であれば相場は500g14000円程度でしたよね?その手の高級品は実はつかったことがありませんでした。
    培地用ではない分のナカライさんの10キロ販売があるのはそれはそれで魅力的ですね。少し安くなっているのでしょうか?ナカライキャンペーンというのに乗るとかなりお安い気がするので少ししらべてみようと思います。