事務局からの過去のお知らせ

バイオリソース事業に対する行政刷新会議による事業仕分けに関する意見書

平成21年11月20日 酵母遺伝学フォーラム 会長 太田明徳

酵母遺伝学フォーラムはわが国の酵母研究を推進する中心的な研究会であり、大学他の研究教育機関に約500名近い会員がおります。私どもフォーラムは若い研究者・学生が切磋琢磨する場としてわが国の生命科学の発展に寄与し、これを担う優秀な研究者を育てて来たと自負しております。わたくしどもは生命科学の基礎研究における酵母の重要性と、産業生物としての酵母の重要性を深く認識し、文部科学省ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)によりサポートされる酵母リソース事業について、ユーザーサイドから運営に協力する組織である「酵母遺伝資源運営委員会」の活動を積極的にサポートしております。実際、「酵母遺伝資源運営委員会」のほぼ全委員が当フォーラムの会員でもあります。

行政刷新会議「事業仕分け」の結果、(独)理化学研究所(バイオリソース事業)に対して、1/3程度の予算削減の方向が示されました。私どもは基礎・応用の両面で酵母をリソース(研究材料)として用いている研究者として、この査定について大きな疑問を感じています。当フォーラムは下記の「酵母遺伝資源運営委員会」の統一見解としての意見を強く支持し、「バイオリソース事業」に対する予算の確保といっそうのご支援を文部科学省にお願い申し上げる次第であります。

「酵母遺伝資源運営委員会」意見書

今回の事業仕分けの結論は以下に述べるように、現状把握が不十分であるため、不適切な結論が導かれていると考えます。「事業仕分け」による予算削減の根拠は次の2点に集約できます。

1)産業ニーズに応える応用研究を考慮していない。したがって、国庫からの支出は最小限に止め、他省庁からの研究費も含めた競争的資金でまかなうのが妥当である。

2)収入を確保する努力が足りず、収益性向上への観点が不足している。したがって、受益者負担の原則を貫き、収入を増やすことに努めれば予算削減しても成果をあげることが可能である。

こうした2つの集約された根拠に対して、我々は次のように考えます。

1)リソース整備はライフサイエンス研究の基盤中の基盤であります。まさに、リソースなくしてリサーチは成り立たないものです。確かに理研リソース事業は産業的な成功を目指す応用研究のみを支えるものとして遂行されているわけではありません。ただし優れた応用研究は豊かな基礎研究から発展することは、科学の歴史が教えています。つまり、リソース整備は基礎研究のみならず、応用研究のインフラ整備でもあるのです。リソース整備は研究活動により生み出された価値の高いリソースを、世界中から収集し、品質を維持しつつ安全に保存し、効率よく研究者に提供する重要な事業であります。その推進には長期的な視野に立った業務の遂行と、海外を含めた研究者とのつながり、および豊富な経験が求められます。したがって、リソース事業には様々な競争的資金とは別途予算措置されるべきものです。

2)リソースを集積し、効率よくかつ安価に提供することにより、これまで研究者が負担してきた、時間的、経済的負荷を大幅に削減することができます。この点もリソース事業が、大型の研究費を得難い若手研究者をはじめとする研究者の支持を集めている理由のひとつです。我が国の科学研究にかかる費用をトータルとしてとらえると、受益者負担を大幅に増やすことは決してプラスにはなりません。これは完全な対価を求めるため高価なリソースしか提供できない海外のリソースセンターの停滞と、それに対する研究者の批判をみると明らかであります。

理研リソース事業と関連するNBRP「酵母」は過去7年間、我々酵母研究者コミュニティとの緊密な連携のもと着実に成長し、今や世界有数の酵母リソースセンターとして、国内外の酵母研究を支えており、欠くことのできないものになっています。

今回の予算削減の査定が関連事業であるNBRP(酵母)にも波及した場合の、極めて深刻な影響について大きな危惧を感じています。「ナショナルバイオリソースプロジェクト」については、国家予算を投入してリソース事業を今後も続けていくことには大きな意義があると考えています。これまでの関係者の努力により培われた人的、物的蓄積を守り育てていくため、文部科学省におかれては持続的な予算を確保するために、関係機関の理解を得るため、さらなるご努力をお願いする次第です。

以上、何卒よろしくお願い申し上げます。

[ 09.11.21 ]


<<前の記事へ 一覧に戻る 次の記事へ>>